進化分子工学

1990年頃、化学の分野でコンビナトリアル化学という新しい方法論が生まれました。様々な分子の混合物である “ライブラリー” 溶液を調製した後、標的分子に対する結合親和性を指標としてライブラリー溶液の中から結合能の高い分子を選抜するという手法です。

試験管の中で結合親和性が低い分子を「自然淘汰」させ、標的分子に対して高い結合能をもつ分子を選抜することから、上記手法は “進化(分子)工学的手法” または “試験管内選抜法” などと呼ばれています。

進化分子工学と分離技術 “磁性粒子支援型キャピラリー電気泳動 (MACE)”

東京大学吉本らが開発したキャピラリー電気泳動を利用する分子分離技術 “Magnetic Assisted Capillary Electrophoresis Separation (MACE Separation)” は、進化工学的分子選抜法のスクリーニング過程を”視える化”し、”結合性分子群の高い濃縮率(≒効率的な自然淘汰)” を提供します。吉本らは、進化工学的分子選抜法の一つである核酸アプタマー選抜実験(SELEX)系に MACE Separation を導入し、高い結合能示す DNA アプタマー群 10 配列をたった 3 ラウンドで獲得することに成功しました。興味深いことに、獲得したアプタマー群の中に in vitro で過去最高の抗血液凝固能をもつトロンビン結合型 DNA アプタマー M08 が含まれていることを見出しました (Yoshimoto and co-workers, Molecular Therapy Nucleic Acids, 16, 348-359 (2019).)。

創薬研究における進化分子工学的手法

SELEX 法以外にも、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、mRNA ディスプレイ法、 DNA-encoded Chemical ライブラリーを用いるスクリーニング法、VHH抗体スクリーニング法など、低分子化合物から抗体まで様々なモダリティ分子のライブラリーを利用する進化工学的分子選抜法が存在します。分離化学技術である MACE Separation は、他の有機化学・生化学の技術と競合することなく、むしろ協奏的に上記全ての進化分子工学的選抜法の質を向上させるポテンシャルを秘めています。

MACE Separation 技術の説明資料
(現在準備中)